みなさん、こんばんは
サンジミニャーノでーす。今回はすでにグロッサの塔に上る予定になっている。いつものように『上りたいから上った』とは筋が違う。『上らなければならない』と言うお達しのもと、私はここに上るのだ。決してお客様のリクエストではない。大人の事情です。
サン・ジョヴァンニ門からの一本道であるサン・ジョヴァンニ通りを歩く足は重い。それは若干疲れていたから。こういう時は『ああ、私は仕事でここに来ているんだった』と思い出す。チステルナ広場にあるジェラテリア・ドンドリは相変わらずの大盛況だが、その先のグロッサの塔にとりあえず向かう。
グロッサの塔はインフォメーションセンターの隣にある入り口から入る。塔に上るには現在9ユーロだ。四角い塔は現代の階段で螺旋状となっている。上っても200段くらいだから大したことはない。むやみに止まったりすると上りたくなくなるぐうたらな私だから、一気に上るようにしている。
もちろん塔の上に辿り着くといつもの茶色い町の風景が望める。四季によって変わるのは木々の色だったりする。高さで言うとピサの斜塔と大して変わらない54mだが、町は坂になっている為、意外と高く感じる。
塔の上からの画像は続くが、私たちが降りようとして、あの螺旋階段を下り始めた時、私にちょっとした異変があった。ここの階段は下が透けて見える作りになっているのだが、どうにもこうにも足がすくんでしまった。こんな事は初めてで、今まで何も気にしなかったことが急に怖くなるってどういう事なんだろう?
私は手術をした後、階段を下りるときはなるべく注意するようにしている。子供のように急いで下りることがちょっと苦手になっていたからだ。それも私の職業柄、足を痛めたり歩けなくなったりすると仕事ができなくなるので上る時よりもある程度の時間がかかることが多い。『足を骨折するなら腕の方がまだマシだ』と常に思っているのだが、殊に今回はすっかり臆病になってしまった。
あんなに気にならなかった透ける階段の存在がいきなり恐怖になってやってくるとは想像もしていなかったので、これは大変なことになったと正直驚いた。去年の冬にアブダビのフェラーリ・ワールドでのジェットコースターに完敗したのを思い出した。この階段もジェットコースターも以前は何とも思っていなかったのに。ジェットコースターは大人になってから好んで乗ったわけではないが、苦手の枠ではなかった。それがダメになったのは久々のことだったのかもしれない。
でも今回の透ける階段は今年も何度も上っている。最後に上ったのは一ヶ月ちょっと前だったか。何も感じなかった。急な苦手ってあまりないものだ。無くったって怖かったのは事実で、またこの塔に上る事はあるのかと不安まで覚える。時々この透ける階段が苦手なお客様がいるので事前にアナウンスはするが、途中リタイアで降りていく方々を見て『何故怖いんだろう?』と無邪気に思った私が今ではその立場にいる。
上るのは大して怖くはなかったが下りるのは本当にビビってしまったので、塔の上から見た素晴らしい景色も頭の中ではぶっ飛んでしまった。苦手なものって突然訪れるんですね。それでもまたこの塔には上りたい、たまたまだったと信じたい。リベンジはこの恐怖から忘れかけるであろう冬に予定中。
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