みなさん、こんばんは
この記事は私の人生を振り返ったものです。バックナンバーは『なぎさの作り方』で読むことができます。 前回は『22:宗教に勧誘された話』についてお話ししました。
短大時代、私はゴルフ部の部長をしていました。
あれは別に私ができるからとかしっかりしているからとかではなくて、くじ引きで負けた様な感じで決まったものです。
私は普通のサークルだって全然参加しないのに、ほとんどを副部長のナオに任せてばかりいました。たまにキャンパス内の打ちっぱなしをしたり、大学同士で交流のあるところと一緒にやったり、学園祭で露店を出すときのみ俄然張り切る部長でした。そんな中、やっぱり仲良しが同じゴルフ部に集まっていたので、冬にスキーに行くことにしました。
白馬かどっかに行った覚えがあります。
新宿で待ち合わせして私とナオとミカは同じ所沢近辺だったので一緒に西武新宿駅からみんなと合流して夜行列車で白馬に向かいました。到着して少しロッジで寝た後、次の朝早くから滑りに行きました。滞在はほんの数日間でしたが、すごく楽しかったです。
そして再び新宿に戻ってきて、そこで解散しました。私とナオとミカは帰りの方向が同じなので一緒に西武新宿駅に戻って所沢への切符を買い、駅構内に入ったところ、
『トイレ行ってくるね』とミカが言いました。
私とナオは荷物も結構あるからミカだけ一人でトイレに行かせて待っていました。ところが15分経っても20分経っても戻ってきません。そこで私とナオが交互にトイレへ様子を見に行ったのですが、ミカが消えていました。
ミカは細身の美人でちょっと抜けてるところはあれど愛嬌が優っていてみんなが許したくなるタイプです。そんな雰囲気があるので異性にもモテる女の子でした。ミカがいなくなったのは間違えなく、私たちが待っていた場所はミカも知っていたし、見通しも良かったので私たちを見失うことはなかったはずです。今の西武新宿駅がどうなっているか知りませんが、当時は改札口入ってすぐ右手にお手洗い、で奥にホームがある誰も迷いようのない造りでした。時間は20時ごろだったと思います。私もナオも自宅に連絡済みで駅まで車で迎えにきてもらう様に到着する時間と共に伝えてありました。
どうやら予定通りの電車には乗れそうもありません。それよりミカが消えてしまった。彼女は身長こそあれど痩せているのでちょっと力のある男性が抱えたらすぐに持ってかれてしまいます。しかしあの時間帯で男性が女性を抱えていたらそれもおかしい話だ。
ミカはどこへ消えてしまったのでしょう。
私とナオはすっかり顔が真っ青になってしまい、どうすればいいか冷静に考えようとしました。駅構内の放送をかけてもらい、それと同時に携帯電話に連絡をしました。ミカは電話に出ません。それこそ携帯電話やPHSが普及し始めた頃です。それによりミカの自宅の電話番号が分からず、ご両親にその状況を伝えることができません。すでにミカが行方不明になってから1時間は過ぎていました。
『落ち着こう、ナオ』私はそう言って、もう一度今までの状況を振り返りました。
改札を入ってからミカがトイレに行きたいと言ったので彼女の荷物とともに『ここにいるよ』と伝えて私とナオはミカと確認をとっていた。ミカが西武新宿駅を迷子になるはずは絶対にない。駅構内もトイレも大きな混雑はなかった…
『おかしい』
いつ警察に話をしに行くか、私たちは二の足を踏んでいました。そのうちひょっこりミカが現れる気がしたからです。大袈裟にしてしまったらそれもどうなのだろう、でも何か事件に巻き込まれているなら早く警察に行ったほうがいいし。私たちはどうすればいいのか少し混乱してわからなくなっていました。
ナオも私もまた自宅に連絡し、状況を説明してミカの行方を駅で待っているので所沢に帰るのはまだ無理だと伝えました。ナオは泣きそうにな顔をしていましたが、実は私も心の中では泣きたかったです。どんな顔でミカのご両親に会えばいいのかまで考えていました。謝って許してもらえるだろうか…
スキーに行く時期ですから寒い時のお話しです。私たちが駅で心細い思いをしながらミカを探して気づいたら23時くらいになっていました。ようやく駅構内の放送で電話が私たちに来ていることをしり、慌てて駆けつけました。相手はミカでした。どうなってるんでしょう…
これがお粗末な話なのですが、ミカはトイレから戻ると電車が出発しそうだったので慌てて飛び乗ったそうです。一人で荷物も持たずに所沢まで帰っていて、それを知らない私とナオは荷物とともにミカの帰りを待っていたのです。そりゃどれだけ探しても会えるわけはありません。しかし、ミカよお前はバカか。
私とナオはそれぞれの荷物プラスミカの荷物を持って所沢に向かいました。所沢駅ではミカが泣きながら両親とホームで待っていました。
『ごめんね、ごめんね』
いや、本当に無事でよかった。そこでミカに荷物を預けて私はナオとナオのお母さんが運転する車で私の家に向かってもらいました。車内で私たちが話した内容は言うまでもなく不可思議なミカの行動でした。緊張の糸がほぐれたからか怒りというより笑いしか起きませんでしたね。夜も遅くなって方向も全然違うのにナオとお母さんは私を家で下ろしてくれてからようやく自宅へ帰って行きました。
私とナオは長時間寒空の下に居たせいもあって一週間ほど風邪で寝込みました。
冬になると、スキーに行くと、西武新宿駅を使うとなぜか私たちはあの出来事を思い出すのです。そして毎回同じことを話します。
『なんでミカは手ぶらで電車に乗ったんだろう?私たちを置いて。』
そして毎回笑うのでした。
(あまりに暑い日が続くのでこんなエピソードを思い出し、書いて見ました)
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