スクロヴェーニ礼拝堂です。
予約して礼拝堂に入れるのはたったの15分です。しかし、もう少し前に集合はかかっているようです。
今回は9時45分の枠に入れてもらいましたが、9時半には礼拝堂前に予約者は待っています。これが心太のように人が移動するとても合理的なシステムをとっていました。私は気後れのせいもあり、端の方でおとなしくしていました。この前の回の人たちはガラスから見える風景だと座ってビデオを見ているようです。さらに彼らの前の回の人たちはちょうどこの時に礼拝堂の中を見学しているようです。
ちょうど日が射してきてそこまで寒く感じなくなってきています。
私はスタッフの人とチケット売り場から礼拝堂前に移動してきて、この礼拝堂のスタッフに顔を出しました。
『彼女が連絡した人です』
ああ、あなたね。わかったわかったと目で合図をしてくれます。ここでチケット売り場のスタッフと別れて1人で他の人たちと呼び出しがかかるのを待っています。
そしてビデオを見ていた人たちが礼拝堂に移動するのと同時に私たちがその部屋に入場します。私は勿論一番後ろで邪魔にならない程度に待ちます。全員入ってから恐縮しながら私も列の後に続きました。
10分くらいの短いビデオを鑑賞します。
この礼拝堂についてのお話やジョットのフレスコ画の構成について左側にはこれ、右側はあれがありますみたいなお話をしているので目当てのものがあったらそこから攻めていけばいいのかというレクチャー的な、礼拝堂攻略ビデオのようなもの。言語はイタリア語で字幕に英語がありました。お客さんのほとんどがイタリア人っぽかったです。
そして9時45分。
ようやく席から腰を上げて礼拝堂の方にみんなで向かいます。
細長い狭い礼拝堂にはジョットのフレスコ画がパンパンに詰まっていて、私たちが礼拝堂に入った一番奥に最後の審判が描かれています。
その左右身廊には聖母マリアとキリストの生涯がパネルになってそれぞれ観ることができます。ジョットは14世紀に活躍した画家ですが、フィレンツェのジョットの塔でも名前が遺っている通り建築家でもありました。よって彼が描く絵はその根底の知識から遠近法を使用し、その当時としては画期的でのちのルネサンスに先駆けて表現したことは多くの人にも知られています。
絵に対する好みはそれぞれでしょうが、私はフィレンツェ重要な教会で今でも観ることができるジョットの作品を通じてこのガイドの仕事を学んだ気持ちでいます。よって、ジョットの絵を見るとホッとしたり可笑しい話ですが懐かしさも感じてしまうのです。特に他の町で出会ったときは旧友に逢えたような安心感っていうのかがあるんですね。
2021年に『パドヴァの14世紀フレスコ画作品群』がユネスコの世界遺産に登録されました。
コロナ禍でのこのニュースによって、これからはさらに沢山の観光客がここを訪れることを目的にパドヴァに来るだろうし、実際観光客数は鰻登りだとスタッフの方も言っておられました。
内陣(Presbiterio)は奥の最後の審判と向き合う形で施され、1300年代初めのジョヴァンニ・ピサーノによる聖母子と両脇に控える2人の天使の彫刻も見ることができました。ピサやシエナのドゥオモにある彼の作品を思い出します。
当時イケイケだったジョットとジョヴァンニ・ピサーノの超人気者を招いての礼拝堂を依頼したスクロヴェーニ家の裕福なエンリコさん。
フレスコ画は1303〜5年にかけて完成しました。700年前のジョットの傑作をわずか15分の間に目や画像に残そうと皆さん真剣に見学しています。
私が気になった画。
向かって右側の人物の服。この緑の服の影になる部分の赤い色を使ったテクニック。ウフィツィ美術館のマザッチョの作品を思い出します。しかし、マザッチョより遥か100年以上前に描かれたこの作品のポテンシャルを感じて私はしばらくボーッとしてしまいました。
ちなみにそのマザッチョの描いた天使はこちらね。(作品自体はマゾリーノとの共作『サンタ・アンナ・メッテルツァ』)
同じ緑の服の天使の影が赤くってこのテクニック凄いって教わったんですけど…
私は青い色がちょいちょい掠れて見えるのでまだ修復が終わっていないのかと思いきや、スタッフの方に後で伺ったところこれで修復は完成形だそうです。2006年って言ったかな?修復が終わったんですって。青の掠れた感じは日の光でそう見えるのだと言われました。すると期間限定で行われるSotto le Stelleの夜間見学の際はもしかしてまた別の色彩を魅せてくれるのかもしれませんね。
人間の集中力なんてそんなに長続きしないもので、15分は短いながらも十分満足しました。
長い時間見てるより、何度か通った方が新たな発見や感動があるはずだと思うからです。
それに腹八分目って言いますもんね。心残りがある方がまた来たくなるってもんです
しかし素晴らしかった。
つづく